ページビューの合計

2015年8月9日日曜日

シリアでのオバマによる「安全区域」は戦火を煽ることになる

リビアで起こったことを覚えているものなら今回の米国とトルコによるシリア国内の「安全区域」が「飛行禁止区域」であり、アサド政権打倒のために以前から計画されていたことがわかるであろう。以下の文はグローバル・リサーチに2015年7月31日に掲載されたシャムス・クック(Shamus Cooke)による Obama’s “Safe Zone” in Syria Will Inflame the War Zone を訳したものです。

この「安全区域」が戦争の大きな拡大であるにもかかわらずメデイアではソフトなトーンで描かれている。実際には「安全区域」は「飛行禁止区域」であり、他国の領土内で軍事制空権の実施を計画していることを意味する。これは長い間国際社会そして米国軍関係者によって主要な戦争行為と認められている。紛争地帯ではある地域に入ってくるもの全てと付近にある危険と思われるもの全てを破壊することによって「安全」を確保する。

トルコはシリア戦が始まったときからオバマに飛行禁止区域を要求していた。この戦争のあいだ中、この数ヶ月間にもずっとこのことが議論されてきたが、攻撃対象と想定されているのは常にシリア政府である。

そして突如飛行禁止区域が実現した。トルコが常に望んでいたのと全く同じ場所で。しかし適切な名称である「対クルド、対シリア政府」安全地帯ではなく「対ISIS」というラベルがついている。
米報道機関は瞬きもせずにこの名前変更を受け入れたが、多くの国際報道機関はもっとよく知っている。例えばインターナショナル・ビジネス・タイムズは「安全地帯の協定」は...アサド(大統領)の止めを刺すことになりえると報告している。

そしてミドルイースト・アイでは、

  。。。(この安全地帯は)トルコにとってシリアのバシャール・アル=アサド政権と対峙するための  難関を突破したことになる。飛行禁止区域が実現したならばアサドとその支持者たちにとって
     大きな打撃となるだろう。

報告している。米国の報道機関でもオバマの安全地帯の同盟国トルコの主要な目的については認識している。クルド戦闘員とシリア政府を打ち負かすことだ。この両者がISISに対して最も効果的な戦闘員であり続けたにもかかわらず。ISISが去った後の空間を埋めることになる地上軍の目的もシリアの政権交代である。ニューヨーク・タイムズが効果的な湾曲法で「比較的穏健なシリアの反乱軍」と呼ぶところの地上軍がISISが去った後の空間を埋めることになるが、この軍隊の目的もシリアでの政権交代である。

ニューヨーク・タイムズが安全地帯同盟諸国の目的を確認した。

  ...トルコとシリアの反乱軍はどちらもバシャール・アル=アサド大統領の打倒が最優先事項で  ある...

もしも安全地帯の標的がシリア政府でないというのであれば、ISIS消滅後にシリア政府軍が以前そうしていたように安全地帯を支配することになる。もし政権交代が目的でないのならシリア政府はISIS攻撃の際には事前に連絡を受け、協調することになったずだ。なぜなら、この安全地帯が指定している同じ地域でシリア軍はISISと激しい戦闘を行っているからだ。このような措置を取らなかったのは「安全地帯」計画がISISよりはるかに大きなものだからだ。オバマは安全地帯を支配する「比較的穏健な戦闘団」が誰なのかについて詳しくは語っていないが当てるのは簡単だ。シリア反乱軍の中で誰が効果的な戦闘集団で、近くの地域を支配しているかを見さえすればいいのだ。

この地域のISIS以外のグループで最近ブランド名を変更して「征服軍」と名乗っているヌスラ戦線とアハラール・アル=シャム率いるイスラム過激派連合である。ヌスラはアル=カイダの公式の連携組織であり、アハラール・アル=シャムの指導者は以前、彼のグループは「本物のアル=カイダ」であると述べている。この征服軍はトルコとサウジアラビアと積極的に協調しており、米国によって訓練された多くの戦闘員らによって構成されている。

これらのグループはISISのイデオロギーと戦術を共有しており、違うのは彼らが米国とトルコと共同で行動することに意欲的であるという点のみだ。いったん「安全地帯」の施行が始まれば多くのISIS戦闘員が単にシャツを脱ぎ変えてヌスラ戦線に参加するであろうことは予測に難くない。なぜなら、この2集団間に原理的な違いはないからだ。オバマは「安全地帯」を支配する国外からの地上軍団がシリア政府を標的にしていることを知っている。ということは米軍機は事実上シリア政府に対するアル=カイダの空軍として機能することになる。

これはシリア政府との直接の軍事衝突が避けられないことを意味する。アサド大統領はすでに、米国、トルコ同盟が協調された軍事作戦によって「安全」にしようとしている地域でISISを攻撃しているからだ。ISISに対処した後に、過激派グループがシリア政府への攻撃を続けることを可能にするための「安全地帯」なので、シリア軍の戦闘機も結局は標的になるであろう。

この危険についてはニューヨーク・タイムズでも認められている。

  「目的が何であったとしても、この(安全地帯)計画はアメリカと同盟国の戦闘機をシリア航空機が定期的に爆弾を落としている地域に今までになく近づけることになり、もしシリアの戦闘機が同盟諸国の地上にいるパートナー(比較的穏健な反乱軍)を攻撃したらどうするのかという疑問を喚起する。」

答えは明白だ。米国とトルコの戦闘機はシリアの航空機と戦闘状態になり、政権交代という目的を達成するまで戦争を拡大深化することになる。これこそがリビアて発展した事態なのだ。米国とNATO主導の人道支援の通路を作るためとされた「飛行禁止区域」は、すぐに雪だるま式に本当の目的達成のために拡大された。政権交代とリビア総統の殺害である。この大規模な戦争犯罪をオバマとヒラリー・クリントンは今でも「勝利」として称賛している。リビア人たちが、以前は近代的であった今や見る影もない国から逃避するために地中海で溺死しているというのに。

もしもオバマのシリアでの目的が実際にISISを打倒することであったなら、それはいつでも数週間で達成できていたことだ。米国の中東地域の同盟諸国と真剣で調整された努力をし、非同盟諸国ですでにISISと戦っているシリア、イラン、ヒズボッラーと協調しさえすればよいのだ。トルコ、サウジ・アラビア、イスラエルとヨルダンがISISとの戦いに参加するならば、直ちに資金、武器そして兵士調達の首を締め上げられ、格段と勢力を落とすことになる。これで戦争は終了。

これが実現しない唯一の理由は、米国とその同盟諸国が常にISISをシリア、ヒズボッラーとイランに対抗するする便利な代理とみなしてきたからだ。またISISはいうまでもなく、イランに友好的なイラク政府への政治的梃いれにもなる。

トルコはISISを打倒するための最も大きな障害であり続けている。なぜならトルコはISISを数年間支援してきたからだ。ISISはずっとトルコ国境をシリア政府からの攻撃から逃れるため、医療支援を受けるため、物資補給や兵員補充のために利用してきた。ISISはトルコ国内に快く迎えられていたので、ISISはソーシャルメデイアでトルコをISISに参加したいジハーディストの為の国際的な通過拠点として宣伝している。トルコの移民局も税関も見て見ぬふりをし、トルコ国境警備もまたそのようにしている。

「安全地帯」について議論するときに、米国のメディアは必ず国家主権という国際法の基盤をなす概念を無視する。国際法の見地からして国々の境界線は侵すべからざるものだ。防衛戦争のみが正当な戦争とみなされる。ある国が他国に飛行禁止区域を施行するのは国境が侵害され、戦争行為によって国際法が破られたことを意味する。

オバマ政権は上述の動力学を理解しているが、2013年に中止となったシリア政府を爆撃する計画を練っていたときと同じように慎重さを捨ててしまった。米国とトルコの飛行禁止区域はすでに地域戦争となったものをさらに深刻化させる。イランとヒズボッラーは最近シリア政権に対する直接支援を増大させた。トルコと米国の軍隊が戦場に入ることによって対決は避けられなくなる。対決することが計画そのものなのだから。


0 件のコメント:

コメントを投稿