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2016年2月17日水曜日

シリアで穏健派が見つからないなら、過激派を扮装させればいい

以下は2016年2月11日にランドデストロイヤーレポートに掲載された、トニー・カルタルッチの、

In Syria, If You Can't Find Moderates, Dress Up Some Extremists

を訳したものです。(アクセス:2016年2月11日)

(投稿題はタイトル訳)


英国放送協会(BBC)の最新の製作物は、見え透いていて、胸が悪くなると同時に、滑稽でもある。


シリアとロシアによる、国を奪回するための効果的な攻撃にさらされ、欧米に支援されたテロリスト軍が崩壊し始めるに伴って、欧米のメディアが放出している、必死の形相を増したニュースの見出しを読むとき、「穏健派反乱軍」とか、「穏健派反政府勢力」などの用語がよく使われるが、欧米のメディアが実際、それらに相当する具体的な派閥の名前や、その指導者の名前をひとつも挙げることができないことに、読者は気づくであろう。

その理由は、穏健派が存在しないし、したこともないからだ。2007年以来米国は、シリア政府を崩壊させ、中東全域におけるイランの影響を不安定化するために、アル・カイダ系の過激派を武装させ、資金を与える企てを行ってきた。

シーモア・ハーシュの2007年の記事、「方向転換:政府の新しい政策は、対テロリズム戦で敵を利しているのか?」で暴露され、はっきりと以下のように記されている。
米国もまた、イランとその同盟国であるシリアを狙った極秘作戦に参加していた。これらの活動の副作用は、アル・カイダに同調し、米国に敵対的なスンニ派の過激派グループを後援してきたことだ。
欧米のメディアが、そのますます扇情的になるニュースの見出しで言い続ける「破局状態」は、シリアで今日行われている、シリアとロシアの防衛作戦の予測できる結果、ではなく、ハーシュが2007年に記述し、議論の余地なく実行されてきた、2011年に始まった、「アラブの春」に名を借りた策謀の結果だ。
欧米が実際、いわゆる「穏健派」の名前や人物を挙げるときには、彼らが直接アル・カイダに繋がっていたことが簡単にわかる。

BBCの「反乱軍司令官」は扮装している

最近掲載された、「シリア紛争:反乱軍は英国と米国から’見捨てられたと感じている’」、と題するBBCのビデオレポートで、BBCのクエンティン・ソマーヴィルは、トルコから「極秘で」米国に支援された反乱軍と連絡を取ったと述べた。「遠隔」インタビューとされたものは、ソマーヴィルが、状況があまりにひどくて反乱軍と接触できなかった、と言っていたにもかかわらず、両側のロケーションともプロの撮影班によって行われていた。そのBBCのインタビューを受けた「アレッポに居る反乱軍上級司令官」は、他でもない、ヤセル・アブドゥルラヒムその人であった。

一度も戦場で着られたことのない真新しいパリッとした「自由シリア軍」の制服で現れ、同じように新ピカの「自由シリア軍」の仏植民地旗の横に座っていたにもかかわらず、ヤセル・アブドゥルラヒムは存在しない「自由シリア軍」に所属も提携も全くしていなかった。

実際彼は、アルカーイダのテロリストとムスリム同胞団の過激派からなるファイラク・アッシャム(Faylaq Al-Sham) の司令官であった。ソマーヴィル自身によれば、ファイラク・アッシャムと、その司令官ヤセル・アブドゥルラヒムは、アルカーイダ系のアハラール・アッシャムとジャイシュ・アル・イスラムを含むファタハ・ハラブという大きな上部組織の一部である。後者のジャイシュ・アル・イスラムは、シリアとロシアの空爆に対して、屋根の上の金属の檻に一般市民を入れて、文字通り人の盾として使った。

人権ウオッチは、「シリア:武装集団が攻撃を抑止するため檻に入れた人質を使う」と題するレポートで、以下を明らかにした。

2013年の12月に、アドラ・アル・オマリアの近辺で武装集団と政府軍が戦っていたときに、ジャブハット・アル・ヌスラ(ヌスラ戦線)とジャイシュ・アル・イスラムは、数百人もの民間人を誘拐し、国連シリア諮問委員会によれば、その殆どがアラウィー派であった。これらの人質の多くは女性と子供たちで、東グータのどこかに監禁されている。彼らが、これらの(写真)檻の中のひとびとではないかと懸念される。
人権ウオッチのレポートは、それがヤセル・アブドゥルラヒムのファタハ・ハラブのメンバー、ジャイシュ・アル・イスラムが関わっているという点で警戒を促させるものだ。ジャイシュ・アル・イスラムは、米国務省のテロリストグループ・リストに載っているジャブハット・アル・ヌスラと協力し、共に戦っているからだ。

米国国務省の「イラクのアルカーイダの別名、アル・ヌスラ戦線のテロリスト指定」と題する、アル・ヌスラを外国テロリスト団体リストに載せた公式な声明書では、
2011年の11月から、アル・ヌスラ戦線は、600以上の攻撃を行ったと主張し、それらにはダマスカス、アレッポ、ハマー、ダラー、ホムス、イドリブ、ダイル・アル・ザワルなどの主要都市中心部での、40以上の自爆攻撃から、小火器と簡易爆発物作戦などが含まれる。これらの攻撃中、数多くの罪のないシリア人が殺された。これらの攻撃を通してアル・ヌスラは自分らをシリアの正当な反政府勢力の一部であるように見せようとしてきたが、実際はイラクのアルカーイダ(AQD)が自分たちの邪悪な目的のために、シリアの人々の闘争を乗っ取ろうとしたものだ。

皮肉なことに、欧米のメディアの偽りを通して、アル・ヌスラは、「シリアの人々の闘争を自分たちの邪悪な目的のために」、完全に乗っ取ることをずっと支援されてきたようだ。


この、BBCの最近のインタビューで、アルカーイダのメンバーそのものと、その系列団体を扮装させた嫌悪すべき行為は、2007年にハーシュが記述した策謀を救済することを目的とした、より大きな偽装パターンに合致する。しかし、昨年の終わりにロシア連邦がシリア政府の招聘により、この紛争に介入することによって、このパターンは打撃を受けた。
アレッポが、明らかにテロリストである勢力から、まさに開放されようと揺れているときに、BBCのプロパガンダは、シリアの人々の苦しみを終わらせるのではなく、恒久化させる否定的な試みを代弁する宣伝を進めてきた。

最悪なのは、BBCが、彼らのファタハ・ハラブ - アルカーイダ傘グループ司令官を「自由シリア軍」のメンバーに扮装させ、「アメリカ後援の」と公言していることだ。

これはBBCが、彼らがインタビューした人物が本当は誰なのかを、聴衆者から、さらに偽ろうとしているか、それとも、米国が、実際テロリストグループと、その連合に資金を与え、米国務省自らの外国テロリストリストに載っている組織を増幅させていることを、うっかりと告白してしまったかのどちらかだ。

どちらにせよ、BBCが放映したような、注意深く脚色された製作物でも、欧米の「反乱勢力」の残りの、テロリスト的正体を隠蔽する意図的なこころみであることが簡単に暴露される。それが、シリア政府と、そのロシア、レバノン、イラクそしてイランの同盟勢力が、この戦争を終わらせてシリアの全ての領土で秩序を完全に回復させることの必然性をさらに強めることになる。

普通の衣装を着た、明らかにテロリストである「反乱勢力」と協議することを欧米が押し付けられたならば、ばかげたものとして決して受け入れないだろう。ならば、地球上に存在する他のどの国も、欧米がそのような条件を押し付けてきたら受け入れるべきでないだろう。