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2015年10月8日木曜日

サウジアラビアが国連人権理事会を率いるという茶番劇

以下はグローバルリサーチに9月24日に掲載されたFelicity Arbuthnot による United Nations Farce: Saudi Arabia to Head UN Human Rights Council を訳したものです。

国連事務総長の潘基文(バン・キムン)は2007年3月12日に人権理事会、第四期を開催するにあたって「全ての人権侵害の被害者は人権理事会を公開論議と行動への跳躍台として頼ることができるべきである。」と述べた。
国連憲章第55条には「人種、性、言語又は宗教による差別のないすべての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守」が、促進すべき目的のひとつとして挙げられている。国連創設時に掲げられた理想とは真っ向から反し、国連はサウジアラビアの国連人権理事会特使を影響力の強い人権パネルの長に任命した。

この任命は6月になされたが、9月17日になって国連ウオッチが手に入れた文書によって明るみに出た。(1)(以下文書抜粋)

...ジュネーブのサウジアラビア国連大使ファイサル・ビン・ハッサン・トラッド氏が国連人権理事会の独立専門家委員会の長に選ばれた。強力な5名の外交団を率いる影響力の強い役を担うトラッド氏は国連が人権に関する権限を持つ国々での数多くの専門家の役職を世界中からの申込者から選ぶ権限を与えられた。

国連ウオッチによれば、このような専門家は人権委員会の「至宝」とよく言われていた。この「至宝」が世界中で最悪の人権記録を持つ国のひとつに手渡されてしまった。サウジアラビアは人権侵害と委託事項を扱う77以上の役職を世界中の申込者から選ぶ権限を与えられた5名の大使からなる諮問委員会を率いることになる。

元国連事務総長のコフィ・アナンが2003年のイラクへの侵略、爆撃、そしてこの国をほぼ破壊したことが違法であることを公的に認めるのに18ヶ月もかかった国連の質の低さと比べても、今回の選択はさらに眼を見張るような劣化であるとして、国連ウオッチは「今年に入ってISISよりもより多くの人々を斬首した国が主要な人権委員会を率いることとなった...」と指摘した。(2)

この任命がされる直前の5月にサウジ政府はさらに8人の刑執行人募集の広告を出した。「...数を増す死刑を執行する、これらは普通斬首であり、公開されるものである」(3)そして「特別な資格は必要ない」模様で、主な職務は処刑であるが、仕事内容には 「切断も含まれる...」とある。この広告はサウジ王国の行政省ウェッブサイトに掲載された。今年の6月15日までに処刑者数は100名を越え、「昨年を大幅に上回って新たな記録を打ち立てることになりそうだ」とインデペンデント紙は述べている。(6月15日付)この記事はまた、この王国は1995年の192名というぞっとする野蛮な記録を更新する模様だ」とも記している。この新聞には、「...処刑数の増加は新国王サルマンとその最近指名された側近らと直接関係がある...」 とある。


2014年の8月に人権ウオッチは17日間の間に19件の処刑があったと報告し、その中には一件の「妖術」もあった。姦通と背教も死刑の対象となりえる。


超皮肉なのは、サルマン国王の首切り前任者でサルマンの異母兄弟であるアブドウッラー国王(現在でも斬首記録保持者)が1月に死亡した際に英国首相のデイヴィッド・キャメロンが国会議事堂やウェストミンスター寺院などで半旗を掲げる指示をしたことだ。ある国会議員は、「ホワイトホール(ロンドン中央官庁街)にアブドウッラー国王への哀悼の意を表する半旗がたなびく日に、いったい何名の公開処刑が行われているのだろう」と疑問を呈した。

キャメロンはサウジアラビアを「懸念される国」として言及している自国の外務連邦省報告書に目を通していないようだ。多くの批判に対し、ウェストミンスター寺院のスポークスマンは「我々にとって半旗を掲げないということは、イスラムテロリズムと戦う同盟国の国王の死に対して表立って攻撃的な所感を述べるのに等しい」と述べた。

この寺院の代表は息を飲むほど無知か、眼を見張るほど情報に疎いかのどちらかであるようだ。2009年12月に米大使館の公電(4)で当時米国務長官であったヒラリー・クリントンは、

サウジアラビア王国(KSA)は国内でのテロリズムの脅威に関しては真剣に受け止めているが、サウジアラビアから出ているテロリストへの資金供給に対処することが戦略的優先事項であることをサウジ高官らに説得するのは常に困難が伴う。

と書いている。そしてさらに、

... サウジアラビアの寄付者らが世界中のスンニ派テロリストへの最も重要な資金源となっている...世界中のテロリストと過激派へのサウジアラビアを本拠とする出所からの資金の流れを食い止めるためにサウジアラビアがより多くの手段を講じることを奨励する...関与が必要だ。

とある。

自国では女性たちは「男性保護者の承認を得ずにパスポートを手に入れたり、結婚したり、旅行をしたり、高等教育を受けることはできない。」(人権ウオッチ・レポート、2014)サウジアラビアはもちろん、世界で唯一女性が運転することを禁じている国である。


この国は現在21歳のアリ・モハメッド・アル=二ムルの斬首を準備している。彼は17歳のときに反政府抗議活動に参加したことと銃器を保持していたことにより逮捕されたが、銃器に関する嫌疑は一貫して否定されている。人権団体らは彼の刑と彼の罪を立証する根拠の脆弱さにショックを受けたが、どちらの「要素も今日のサウジアラビアではめずらしくはない」と指摘している。斬首の後、アル=二ムルの首なし体は「公開観覧のために十字架に貼りつけられる」ことになるようだ。(5)

米、英の政府省庁からひっきりなしに発せられる「自国民を殺す」政府に対する空爆、侵入そして虐殺を正当化するお題目はなんなのか。

数多くの報告書が、サウジアラビアが国連拷問禁止条約に署名をしているにもかかわらず拷問が広く行われていることに言及している。

世界中のサウジ大使館前で、ブロガーのライフ・バダウィが言論の自由についてブログを書いたことで千回の鞭打ち刑を言い渡され、毎週金曜の祈祷後に50回の鞭打地を受け、そして10年の禁固刑を言い渡されたケースに焦点を当てる抗議行動が行われている。

三月以来サウジアラビアは国連の委任なしにイエメンを爆撃し、学校、病院、家屋、ホテル、公共のビル、国内避難民キャンプ、重要歴史文化財を破壊して「一般市民の死と破壊の痕跡」を生み出した。これらをアムネスティー・インターナショナルは戦争犯罪の可能性があるとした。「違法な空爆」は軍事標的と一般市民のものを区別することができなかった。「市民が安全な場所はどこにもない」とアムネスティは指摘した。(6、pdf)

さらに、2015年3月25日以降この紛争は...4千人近くの死亡者をだし、その半数は数百人の子供を含む一般市民であり、百万人以上が避難民となった。「...一般市民の生命と国際人道法の基本原則への言語道断たる無視により数百の紛争に参加していない多くの子供と女性を含む市民が違法(過度で無差別)な地上攻撃と空襲によって(死亡し負傷)」してきた。

米国が供給したクラスター爆弾が使われたと疑われている。2008年12月以降117カ国がこれらの致死性があり無差別な武器弾薬を禁止する条約に加盟している。サウジアラビアはもちろん加盟していない。

サウジはまた、現在は広く違法と認められている2003年のイラクを爆撃をした国のひとつである。イエメン爆撃が米国防省の人民殺害時のばかげたお題目リストのひとつ、1991年イラクでの「砂漠の嵐作戦」とそっくりな「決然たる嵐作戦」とされたのは彼らの米国との親密さを暗示するものではないか。

サウジはまた2015年の国境なき報道団の報道の自由指標で180カ国中164位であった。全ての面でサウジが国連の人権理事会を率いることはジョージ・オーウェルの最も悪夢に満ちた政治ファンタジーそのものだ。

そういえば、世界貿易センタービルに突入した飛行機のハイジャック犯のうち19人はサウジアラビア人だともちろん教えられてきたが、その「対テロ戦争」の最も血なまぐさい大量虐殺という罰をアフガニスタンと中東、北アフリカでは今でも受け続けている。サウジの代表が国連人権機関の日の当たる場所に入り込んだときに。

国連人権理事会ウェッブページには「国連人権高等弁務官事務所は人間の尊厳という普遍的な理想に対する世界の関与を代表する。我々は人権の促進と保護という独特な権限を国際社会から付与されている。」とある。皆さんよく言うね。